「直下型地震と富士マイクロのBCP」

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「直下型地震と富士マイクロのBCP」

■中小企業庁の中小企業BCP策定様式・・・中小企業へのBCPの普及を促進することを目的とし、中小企業関係者や有識者の意見を踏まえ、中小企業庁が作成した。指針には、中小企業の特性や実状に基づいたBCPの策定及び継続的な運用の具体的方法が、わかりやすく説明されている。

■バイタルレコード・・・企業の存続に関わる文書や代替情報が他に求められない文書(紙媒体の文書に限らず、電子データも含めた情報資産)。バイタルレコードには、設計図、見取図、品質管理資料等、災害時に直接的に必要な文書やコーポレートガバナンス・内部統制維持、法令遵守、説明責任確保のための文書、権利義務確定、債権債務確保のための文書等、契約書、顧客台帳等間接的に必要な文書がある。

■BCP(BusinessContinuityPlan)・・事業継続計画。災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事業活動が中断した場合においても、目標復旧時間内に重要な機能をを再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略活動。具体的策としては、バックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などの対策を実施する。マネジメント全般を含む事業継続マネジメント(BCM)の意味も含めて用いる場合もある。

本震4月16日土曜日午前1時25分

自宅で睡眠中に、直下型地震の突き上げる縦揺れで目が覚めた。熊本地震本震発生時の揺れは20分間止まることなく続いた。会社と自宅のある熊本市東区で、本震後30分間に震度6強1回、6弱1回、震度4を4回、震度3を6回をはじめ18回の連続した地震を経験した。ラジオでは津波警報がでており、市民病院倒壊の恐れという報道もあり、阿蘇を震源とする地震の発生、阿蘇大橋の落下という、大惨事が朝まで次から次へと起こった。地面からは大きな地鳴りがし、ひっきりなしに緊急地震速報のチャイムが携帯から流れ、そのたびに身構えた。気象庁の記録を見ると朝の7時までに133回の地震が発生していた。

後の社員の話では、連続する地震の中、津波を恐れ5人乗りの車に家族7人乗せて高台まで避難した者や、両親と連絡が取れず実家へ安否確認に出かけた者、屋外に避難し瓦やモルタルの落ちる音を聞きながら過ごした者、車の中で過ごした者などさまざま居り、それぞれの環境下でそれぞれ状況を判断し激しい揺れから身を守っていた。皆、身を守ることだけで必死だったと思う。避難所は、すぐにいっぱいになり体育館の中も安心していられる状態ではなかったとのことだった。

事業継続計画(BCP)の策定・実施

私は東日本大震災が発生した2011年に事業継続計画を体系的に学ぶため、事業継続推進機構(BCAO)の事業継続初級管理者セミナーを受講していた。その中で最も講師が強調していたことは、「BCPを策定し、中核事業の施設・設備が復旧してもキャッシュフローが回らなくなり倒産した企業が多くある」ということだ。そうならないためには「営業活動は平常時と変わらず動かし続けること」「受注残の納期を守ること」そのためには「全ての人と時間を復旧に投入してしてはならない」ということであった。この話を思い出し、作業場の復旧には営業部員を充てずに行い、営業部員にはお客様の状況を収集する役割をさせた。

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ま た 同じく2011 年には 、中小企業庁のBCP策定様式をダウンロードし計画書を作成してみた。概要をつかむ目的であったため組織への落とし込みはしていなかったが実践的な運用を少しは練ることができた。

安否確認に関しては、社員全員に会社携帯を持たせており、ショートメールで連絡することができた。緊急連絡網は日頃常に更新して配布していた。九州は台風が多いため緊急連絡網の活用度が他地区よりも高く常態化できていた。

「熊本市」の被災状況と施設内に潜む凶器

マスコミの報道では、益城町、南阿蘇村と熊本城の被害が大きく報道されていたが、熊本市においても多くの施設が被災した。全壊判定のオフィスビルやマンション、校舎もある。日常利用するショッピングセンターや公共施設などの大型施設は本震で天井パネルが落下している。カーディーラー等のショールームのガラスは割れ、多くのオフィス内においてはキャビネット類が将棋倒しになった。被害は上層階に行くほどひどい状態になる。図書館でも同様に棚が倒れ、本が散乱した。震度6強を越えると天井パネルのような建物の非構造部材や書棚のような備品が凶器にかわることが如実にわかる。書類の「重さ」は揺れを増幅し、倒れた書棚が直接的に人へ危害を与える。また建物の内装を破壊する。増幅された揺れは建物の構造部をも破壊するのだ。直下型地震の衝撃は大きい。

幸い死者負傷者の数が少なかったのは、多くの人々が活動していない深夜に起きたことと、前震の翌日であったためさまざまな対策がとられたことが大きい。また、自衛隊・消防・警察も熊本に集まってきており、事実1709名もの生存救出が行われた。

前震がおきずに昼間に本震が直撃していたら大惨事になっていたと県民誰もが思っている。

※撮影:富士マイクロ株式会社 複製禁止

熊本地震震災アーカイブ 

富士マイクロ株式会社 代表取締役 久永耕三

ガラスの割れた大学の校舎

(熊本市中央区大江・2016年6月29日)

外壁に亀裂の入った10階建てマンション

(熊本市中央区水前寺・2016年8月16日)

119世帯・11階建てマンション

(熊本市東区長嶺西・2017年4月16日)

「危険判定」の37世帯・11階建てのマンション

(熊本市東区保田窪・2017年4月23日)

落下した天井が運び出されたホームセンター

(熊本市東区石原・2016年4月20日)

天守閣の復旧工事が始まった熊本城

(熊本市中央区・2017年4月23日)

■業務継続計画・・災害時に行政自らも被災し、人、物、情報等利用できる資源に制約がある状況下において、優先的に実施すべき業務(非常時優先業務)を特定するとともに、業務の執行体制や対応手順、継続に必要な資源の確保等をあらかじめ定め、地震等による大規模災害発生時にあっても、適切な業務執行を行うことを目的とした計画である。

地方公共団体の防災対策を定めた計画としては地域防災計画があり、これを補完して具体的な体制や手順等を定めたものとしては各種の災害対応マニュアルがあるが、業務継続計画は、これらの計画等を補完し、又は相まって、地方公共団体自身が被災し、資源制約が伴う条件下においても非常時優先業務の実施を確保するものである。

BCPにおける最も大きな脅威

初めて体験した震度6強の衝撃は想像以上であった。体験して初めてわかったのは、防災対策やBCP策定時に体験したことのない脅威をリアルに想像出来るかどうかということだ。策定メンバーの想像力の差、認識の低さが最大の脅威だと考えられる。弊社でもこの教訓を生かしBCPのあり方を今一度見直し組織に落とし込んでいく方向でいる。

日本の国土の成り立ちを考えると、熊本で起きていることは、長い時間をかけて各地で起きていくことと思う。この日本で生活し、仕事をし、暮らしていくならば、「自然災害と共に暮らす」覚悟と、「自然災害から暮らしを守る」仕組みを作り備えることが大切であると改めて感じている。

「危険判定」の46世帯・11階建てのマンション

(熊本市西区田崎・2017年5月7日)

眠れぬ車中泊

本震当日、会社の緊急処置を済ませた後、帰宅すると既に近所の人たちは安全な場所へ避難していた。自宅は河川に近く、記録的大雨予報も出ており、水害と余震による自宅の倒壊を恐れ、私も近くの病院の駐車場に空きを見つけ車を停めた。豪雨の中、朝まで車中で過ごした。前震、本震、車中泊と眠れぬ日が3日続いた。誰もがみな戦々恐々とした精神状態になっていた。

そのあとも地震は続いた。大きな揺れが起きると建物の外壁タイルや瓦などが落下してくる。ブロック塀も倒れてくる。自宅などの普段の駐車スペースは決して安全ではないため、公共施設や大型店舗などの駐車場や空き地は車中泊目的の自動車であふれていく。ひとつのマンションの住民だけで避難所やスーパーの駐車場が埋まってしまう。安全な駐車スペースを確保することは容易なことではなかった。

出 社

翌16日土曜日は出勤日であったため社員が出社しないよう、明け方の5時過ぎには出勤停止のメールを配信した。しかし私は、点検のため7時過ぎに会社に向かった。震源地である益城町から本社は6kmの位置と近かったが、4階建ての社屋の外観はとりあえず問題ないようだった。しかし2階に設置していたL型カメラは20cm以上も移動していた。現像機は倒れ、液が床にこぼれ、酸の強烈なニオイが立ちこめていた。社屋の3階4階では、連結したキャビネットや棚の倒壊により、機器の破損やファイルの散乱もおきていた。このような状況ではあったが、幸いお客様からの預かり品や納品物は、1階の耐火書庫に移動させていたため被害がなく、その点においては胸をなでおろした次第だ。こぼれた現像液などの対応のため、出社可能な社員を集め緊急処置を施した。社内のインフラに関しては、停電はおきなかったが、断水は2週間続き、そのためマイクロフィルムの現像はようやくGW明けに可能となった。

富士マイクロは本社を熊本市東区にあります。熊本地震の体験を写真と共にデジタルアーカイブします。

熊本の復興に向けて

熊本の復興には長い時間がかかると思われる。イメージ情報業として、紙書類の重さや紛失に起因するリスクの解決策としてのペーパーレス化を推進し、またこの熊本地震の伝承のための震災アーカイブの構築と熊本地震のデジタルアーカイブの推進と、また起こりえる災害から貴重図書やバイタルレコード、企業情報を保護し、熊本の復興に貢献していきたいと考えている。

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最後になりましたが、このたびの熊本地震被災に際しまして、各方面からのご厚情に心より感謝申し上げます。また余震の恐怖と環境の大きな変化で自宅の片づけも進まない中、職場の復旧に取り組んでくれた従業員にも感謝します。直下型地震の理解と備えのご参考になればと思います。

○マンションの被災状況

(熊本市内全壊マンション19棟・大規模半壊21棟・半壊52棟)

○ショッピングセンター・大型店舗の被害

○熊本市動植物園 (熊本市東区健軍・2017年5月14日)

↓クリックするとグーグルマップや動画と連携する画像もございます。

○墓地の被害

○地下水への影響

益城町

熊本市中央区

西原村

○震災後1年たった南阿蘇のリゾート地 

土砂におされ倒壊した長野地区の別荘

地滑りにより傾いた河陽地区の別荘

BCPの想定外

地震後の生産活動に大きな影響をおよぼしたのは、意外にもパート従業員の出社時期の遅れであった。熊本地震は余震が長い期間続いたため学校の再開に3週間以上かかった。そのため子供のいるパート従業員の多くは、地震発生から一か月以上経った5月の中旬の出社となった。学校の再開が事業継続に影響することは全く想定できなかった。 

○熊本市の小中学校の被害状況

【手記】熊本地震を体験して・・・

■震災アーカイブ・・震災関連の情報を集めたデジタルアーカイブ。様々な震災に関連する記録をデジタルデータにより収集・保存・利用(提供・公開)することにより、防災・減災、各術研究、復興に向けた取り組み等への活用を目的とする。

熊本地震により被災し休園していたが、2017年2月25日より土曜・日曜・休日のみ部分開園された。

下記は未開園部分を公開した被災状況見学会時の写真を含みます。画像をクリックすると地震直後に撮影されたgoogleストリートビューがご覧いただけます。